学校力向上について

2018年11月13日

 決算特別委員会 第2分科会において教育委員会所管にかかわる質疑を行いました。

 ◎学校力向上について
 ◎地域医療を支える人材の育成について 

太田憲之委員

 初めに、学校力向上についてであります。道教委では、学校の総合力を高めるとともに、将来のスクールリーダーを計画的に育成するため、平成24年度から、学校力向上に関する総合実践事業に取り組んでおります。事業がスタートしてから、既に6年が経過しておりますので、これまでの取り組みの状況や成果などについて、以下、順次伺ってまいりたいと思います。まず、この事業をスタートさせることとなった当時の背景や事業の目的、取り組み内容についてお伺いいたします。

○池野義務教育課長

 学校力向上に関する総合実践事業についてでございますが、本事業は、全国調査等で明らかになりました、学力、体力の向上などの課題に道内の各学校が対応するため、管理職のリーダーシップのもとで、学校全体がチームとなって、包括的な学校改善を推進し、学び続ける学校のモデルを提示して、その普及に努めることや、将来のスクールリーダーを継続的に輩出する新たな仕組みを構築することを目的として、平成24年度から実施しております。本事業の指定校では、学校の教育目標の実現に向けて校内組織を工夫するなど、学校マネジメントに関すること、ミドルリーダーが中心となり、若手教員の計画的な育成を目指した研修を行うなど、人材育成に関すること、学力、体力等の具体的な到達目標を設定し、授業改善を行うなど、教育課程、指導方法等に関すること、地域住民等の参画により学校運営を改善充実するなど、家庭、地域との連携に関することなどに取り組んでいるところでございます。

太田憲之委員

 次ですが、事業の成果を全道的に普及させていくためには、各地域に、取り組みの中心となる学校をバランスよく指定し、取り組みを工夫して展開していく必要があると考えます。これまで、どのような考え方で学校を指定してきたのか、これまでの指定の状況とあわせてお聞かせ願います。○池野義務教育課長指定校についてでありますが、本事業を開始した平成24年度は、道央、道南、道北、道東の4ブロックに指定校を配置することとし、中心となって事業を推進する小学校の7校を実践指定校に、その成果を積極的に取り入れる同一市町村の小中学校の23校を近隣実践校に指定して取り組み始めたところでございます。
 その後、より多くの地域で取り組むことができるよう、指定校を拡充し、平成26年度は、14管内で、実践指定校の19校、近隣実践校の61校、29年度は、実践指定校の25校、近隣実践校の76校で実施し、本年度からは、事業の成果をさらに普及するため、近隣実践校の指定を廃止し、67校を実践指定校として、事業を進めているところでございます。○太田憲之委員ただいま、指定校の状況についてお伺いしました。
 この事業では、取り組みの中心となる実践指定校などに加配の教職員が措置されているということでありますが、どのような考え方で、1校当たり何人ぐらいの教員を措置しているのか、全道でどのくらいの人数になっているのか、これまでの配置状況についてお聞かせ願います。

名子教育政策課長

 教職員の加配についてでございますが、本事業は、包括的な学校改善の推進や計画的な若手教員の育成等を目的としておりまして、通常の学校と比べて事務事業量が増加することから、実践指定校においては教員2名を、近隣実践校には教員1名を基本として加配するほか、近隣の学校を含めた新採用教員の配置状況に応じまして、さらに1名の教員を措置してきております。
 加えて、市町村内の学校間連携の強化のため、各自治体につき1校の指定校に事務職員1名を加配措置してきたところでございます。これまでの加配の状況といたしましては、平成27年度は120人、28年度は135人、29年度は144人でありまして、本年度は165人を加配しております。

太田憲之委員

 この事業における取り組みの一つの柱である学校マネジメントは、学校力を高める上で非常に重要な取り組みであると考えますが、実践指定校では、これまで、どのような成果が上がってきているのでしょうか。また、ほかの学校にもそうした成果を広めていくために、道としてどのように取り組んでいるのか、お聞かせ願います。

池野義務教育課長

学校マネジメントについてでありますが、実践指定校では、管理職のリーダーシップのもと、ミドルリーダーを核とした校内組織の工夫や、教育活動の検証改善サイクルの確立などに取り組み、学校運営に対する教職員の参画意識が高まった、全教職員で指導の方向性等を共有することで、一貫性のある指導が実現され、子どもたちの学力が向上したなどの成果が報告されております。
 道教委では、こうした成果が道内の全ての学校で生かされるよう、指定校の学校マネジメントの取り組みを、全教員が参考とする教育実践報告書に掲載し、周知を図るとともに、各教育局の学校訪問などで、それぞれの学校の実情に応じたマネジメントの具体策について、指定校の成果を踏まえて指導を行うほか、より多くの教員が指定校の授業を参観したり校内研修に参加したりすることができるよう、研修機会の拡充に努めるなどの取り組みを進めているところでございます。

太田憲之委員

 それでは、もう一つの柱である人材育成の取り組みにつきましては、管理職員のなり手不足が深刻化する中、各管内の将来を担う教員を継続的に輩出することにつながり、大きく期待しているところでございますが、具体的に、どのような取り組みを通して育成しておられるのか。既に、実践指定校で力をつけた教員がほかの学校などに異動している例もあるかと思われますが、どのような活躍をされているのか、わかっている部分があれば、お聞かせ願います。

池野義務教育課長

人材育成に関する取り組み等についてでありますが、道教委では、実践指定校に、毎年、1名から2名の新採用教員を配置し、3年から4年の勤務経験の中で、ミドルリーダーが日常的に模範授業を見せたり、若手教員の授業を見て、放課後に指導を行ったりすることを通して、教員として必要な指導技術を確実に身につけさせることや、先輩教員が、若手教員の日ごろからの指導上の課題、悩みの相談に応ずることなど、加配を有効に活用したきめ細かな育成を進めております。
 これらの取り組みにより、本事業に取り組んでいる学校の初任段階教員を対象としたアンケート調査において、多くの教員が、教科指導、学級経営、チーム貢献の力を高められたと回答し、その後の異動先においても、校内研修や生徒指導の中心として活躍するほか、こうした若手教員の指導に携わったミドルリーダーにつきましても、教頭や主幹教諭に昇任したり指導主事に採用されたりするなど、相乗効果が生まれてきております。

○太田憲之委員

 今年度の教育行政執行方針でも、義務教育における学校力向上に関する総合実践事業などによる成果の普及を図ると示されているところでありまして、この事業は、学校経営そのものの質を高めて、人事異動などを通じて、ほかの学校にも波及効果を及ぼす重要な取り組みであり、しっかりと事業を検証し、さらによい取り組みとしていく必要があると考えます。道教委は、今後、どのように取り組んでいく考えなのか、お聞かせ願います。

村上学校教育監

 今後の取り組みについてでございますが、本事業におきましては、学校マネジメントが機能し、チームとなって学校改善を進めることができた、初任段階教員を育成する取り組みを通して、若手教員はもとより、ミドルリーダーを初めとする他の教職員も成長しているなどの成果が見られるところでございます。今後は、こうした事業の成果につきまして、大学教授等の有識者による分析、考察などをしていただきながら、学校改善のための効果的な取り組みとして整理し、その普及に努めますとともに、各学校の、学力、体力の向上など、さまざまな課題解決の基盤となる、管理職のリーダーシップのもとでの学校マネジメントや、人材育成の仕組みの一層の強化に向け、事業内容の不断の見直し、改善を図りながら、本道の学校経営の充実に資するよう取り組んでまいりたいと考えております。

太田憲之委員

 北海道の学校力向上の取り組みに非常に頑張っているところでありますが、生徒自身の努力はもちろんのこと、学校全体の力を上げていかなきゃならないわけであります。包括的な学校の改善対策ということで学校力の向上に取り組んでおられると思いますけれども、今言われたように、ミドルリーダーを初め、人材が育ってきているものと思います。教員集団の協働に基づき、学校力を上げていくということが考え方の基本にあると思いますので、これからも、教員一人一人の能力が相乗効果として発揮される学校、また、教員の努力が成果に結びつく学校を目指し、道教委として、学校力の向上に対する取り組みに御尽力いただくようにお願い申し上げまして、次の項目に移らせていただきたいと思います。
 次は、地域医療を支える人材の育成についてお伺いをしていきたいと思います。将来における本道の地域医療を支える人材を育成するため、医学部への進学を目指す高校生に、地域医療の現状や医師という職業への理解を深める機会を提供し、教育課程の改善などにより効果的な学習支援を行う、地域医療を支える人づくりプロジェクト事業が実施されており、既に10年が経過することから、これまでの取り組み状況や成果などについて、以下、数点にわたって伺ってまいりたいと思います。まず、このプロジェクトは、平成20年度からスタートしているところでありますが、この事業をスタートさせることとなった当時の背景や事業の概要についてお聞かせ願います。

山本高校教育課長

 事業実施の背景などについてでございますが、本道においては、医育大学への進学者数が少ない地域ほど、医師数も少なく、医師不足が深刻な状況でありましたことから、道教委としても、こうした地域出身の医師の増加に資する事業として、平成20年度から本事業を開始したところでございます。
 本事業では、道立高校を指定して、教育課程の工夫や指導方法の充実を図ることにより、進路希望の実現に向けた効果的な学習支援に努めますとともに、医育大学、病院等と連携して行う、大学施設や病院の見学、医療体験、地域医療の現状や医学に関する講演などの取り組みにより、医学部への進学を目指す生徒に対して、地域医療の現状や医師という職業への理解を深める機会を提供し、本道の地域医療を担っていく使命感を育成することとしてきたところでございます。

太田憲之委員

 この事業においては、2学年、3学年に、数学や理科などの授業で少人数指導を行う教育課程を設ける医進類型指定校を原則3年間指定して、取り組みを進めるとともに、取り組みを広げるために、指定校が置かれていない管内には協力校を1校指定して、取り組みを行うこととしております。取り組みに当たって、どのような考えで指定校等を指定してこられたのか、これまでの指定の状況とあわせてお聞かせ願います。

山本高校教育課長

 医進類型指定校等の状況についてでございますが、指定校については、医学部医学科への進学を目指す生徒に対してきめ細かな学習支援を行うための教育課程を編成、実施する医進類型を設置することとしており、平成20年度の事業開始時に、全道のバランスを考慮しながら、石狩管内を除く地域の中から、医学部へ進学した実績が一定程度ある道立高校の9校を指定したものでございます。
 また、本事業を全道的に推進していくため、指定校が指定されていない管内におきまして、道立高校の各1校を協力校と指定しており、本年度は、札幌南高校、静内高校、江差高校、留萌高校、稚内高校及び根室高校の6校としているところでございます。

太田憲之委員

 指定校や協力校では、道内の医育大学の教授等が講義を行う高校生メディカル講座や、地域で活躍する医師の講演、医療機関の見学などを行う地域医療体験事業を毎年1度実施することになっておりますが、昨年度の実施状況はどのようになっているのか、地域医療体験事業については、内容も含めてお聞かせ願います。

山本高校教育課長

 昨年度の実施状況についてでございますが、道内の3医育大学と連携して実施している高校生メディカル講座につきましては、指定校の生徒が478名、協力校の生徒が201名、指定校及び協力校以外の学校の生徒が200名、合計で879名が参加しており、一昨年度より127名増加をしております。また、地域医療体験事業につきましては、地域医療に対する生徒の理解を深めさせるとともに、医療人に必要とされる豊かな人間性の育成を図るため、医師による講演、医療機関の見学のほか、医療体験や医師等との座談会なども行っており、指定校の生徒が247名、協力校の生徒が41名、指定校及び協力校以外の学校の生徒が69名、合計で357名が参加しておりますが、一昨年度より99名減少しているところでございます。
 指定校以外の生徒の参加数が減少傾向にありますことから、今年度は、各指定校、協力校において、他校の生徒も参加しやすいよう、日程を調整いたしますとともに、医育大学と連携して、事前レポートやワークショップ形式を取り入れるなど、生徒が主体的に取り組めるように工夫を図ったほか、対象を中学生にも広げ、近隣の中学校にも案内し、開催をしているところでございます。

太田憲之委員

 れでは次に、指定校や協力校における取り組みを効果的に行うとともに、成果を普及させるため、指定校等連絡協議会が毎年開催され、取り組みの調査研究や、成果と課題等の情報交換、研究協議などが行われておりますが、ここ3年間における成果や課題の主なものと、その後の取り組みなどについてお聞かせ願います。

山本高校教育課長

 事業の成果や課題についてでございますが、指定校等連絡協議会においては、成果として、生徒が、さまざまな取り組みを通して医療現場を体験することで刺激を受け、学習意欲の向上や家庭学習の時間が増加したこと、医進類型の担当教員が、指導主事で構成するサポートチームからの指導助言により授業改善を図ることができたことなどが報告されております。
 また、課題といたしましては、協力校において、医学部医学科を志望する生徒が少ないことから、医師を講師とした高校生メディカル講座の効果的な実施が難しい状況にあることなどが挙げられており、道教委では、こうした参加生徒が少ない協力校においても効果的な事業の実施となるよう、昨年度から試行的に実施している講座の遠隔配信を拡充するなどして、引き続き、講座の充実に努めてまいります。

太田憲之委員

 この事業の中で、医学部進学を目指す高校2年生が、夏季休業期間中の4日間程度、道内の社会教育施設などに集まり、医育大学の見学や各種講座、生徒間の交流学習などを行う高校生メディカル・キャンプ・セミナーが開催されているところでありますが、昨年度の開催の概要や、ことしを含む4年間の参加者数はどのようになっているのか、お聞かせ願います。

山本高校教育課長

 高校生メディカル・キャンプ・セミナーについてでございますが、昨年度においては、4日間の日程で、札幌医科大学、旭川医科大学、ネイパル深川を会場に、医育大学での体験実習、医師による特別講義、保健福祉部からの、本道の医師確保対策や北海道医師養成確保修学資金貸付制度の説明などのほか、医学部合格に向けた数学や英語の講義、将来の北海道の医療を考えるワークショップなどの実施により、参加者の、進路実現に向けた学力や医学部への進学意欲の向上に努めたところでありまして、参加者からは、医師になりたい気持ちがより増すような企画だと思った、北海道の医療に貢献しようという意識が強くなったなどの感想があったところでございます。参加者数につきましては、平成27年度が62名、平成28年度が80名、平成29年度が68名、平成30年度が60名となっており、本事業開始からの平均の参加者数は約72名となっております。

太田憲之委員

 この事業がスタートしてから10年が経過していると最初にも言いましたが、これまでの取り組みを通して、医学部に進学する生徒の状況にはどのような変化が見られているのか、実施前と比べて進学者数はどのように推移しているのか、また、この状況をどのように受けとめておられるのか、あわせてお聞かせ願います。

赤間指導担当局長

 取り組みの成果についてでございますが、医学部医学科への進学者数は、本事業実施前の4年間における指定校9校の合計が年平均で51.0人であったのに対して、本事業開始後の10年間では、年平均が63.3人となっております。道教委といたしましては、高校生メディカル講座や地域医療体験事業などの体験的な学習を通して、地域医療の現状についての生徒の認識が深まり、医師としての強い使命感や志を持つようになったほか、各指定校において、学力向上に向けた取り組みの充実が図られたことにより、進学者数の増加に寄与したものと受けとめているところでございます。

太田憲之委員

 地域医療を担う医師を養成し、地域偏在の解消を目的とする地域枠は、道内の3医育大学でも導入されておりますが、札幌医科大学のように、募集段階から地域枠を設定して推薦入試を行うものや、一般入試等の後に希望者からの手上げ方式で行うものもあり、手上げ方式では、地域枠にあきが出るなどの問題が指摘されているところであります。このような状況を回避するために、関係大学の入試制度の周知徹底を図るとともに、地域医療を支える人づくりプロジェクト事業のこれまでの成果や課題等を踏まえた取り組みの一層の充実を図っていく必要があると考えます。地域医療を支える人材の育成に向けて、道教委は、今後、どのように取り組んでいく考えなのか、最後にお聞かせ願います。

佐藤教育長

 今後の取り組みについてでありますが、各地域における深刻な医師不足の改善を図るため、長期的な視点に立って、地域医療を支える人材を育成することが大変重要であるというふうに考えております。医学部医学科への進学を目指す道内の生徒に対し、本道の地域医療の現状や医師という職業への理解を深めさせ、地域医療に貢献したいという意識を醸成するとともに、進路希望の実現に向けた効果的な学習支援を行っていくことが重要であると認識しております。
 今後は、地域医療体験事業などの取り組みの改善充実に努めますとともに、各指定校における学習指導や進路指導が一層充実するよう、指導主事によるサポートチームの支援を行うほか、知事部局と連携し、医育大学の入試制度や、北海道医療人材確保ポータルサイトの活用について、道内の高等学校に周知するなどして、医学部医学科への進学を目指す生徒の希望が実現し、使命感を持って本道の医療を担う医師が1人でも多く育っていくよう、地域医療を担う人材の育成に努めてまいります。以上です。

太田憲之委員

 本道の医療を担う医師を育て、人材をつくるため、地域医療を支える人材育成事業を10年前からやっているとのことでありますが、高校生、大学生が実習などを経て、一人前のお医者さんになるには、すごく月日がかかり、一朝一夕にできるものではございません。このようなことを10年前から計画し、やってくれていることに本当に感謝します。また、若い学生時代には、職業に対するイメージはなかなかつかめないと思います。いろんな会社のインターンシップを通じて、その職業の感じをつかんで、目標に向かって頑張っていこうという意識の醸成、そういったことを中学校にも輪を広げてやっているということで、本当にすばらしく、いいことだなと思います。
 これからも、学生のうちに意識を高めるということは、何をおいても重要なことであると思いますので、引き続き、この事業に積極的に取り組んでくださることを心からお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございます。