平成28年第3回予算特別委員会

2016年09月30日

予算特別委員会第1分科会 において、社会福祉施設における非常災害対策と、食品関係事業者へのHACCPの導入について伺いました。 

道議太田憲之

 まず初めに、社会福祉施設における非常災害対策についてお伺いをいたします。
 8月に道内を襲った前線と台風による大雨で、高齢者や障がいのある方々などが利用する18の社会福祉施設におきまして、浸水等の被害を受けております。
 南富良野町で、床上浸水などの被害を受けた介護老人福祉施設では、年に3回、入所者らの避難訓練を行い、災害時の避難方法を定めた防災マニュアルも作成しておりましたが、それは火事や地震への備えが主で、水害は想定外であったという新聞報道等がなされておりました。
 そこで、社会福祉施設における非常災害対策について、何点かお伺いをいたします。
 まず初めに、社会福祉施設におきます非常災害対策についての規定はどのようになっているのか、お伺いいたします。

施設運営指導課長大平幸治

 福祉施設の非常災害対策についてでございますが、各施設の設備や運営の基準を定めた道の条例におきまして、事業者は、非常災害に関する具体的な計画を策定し、定期的に、避難、救出その他必要な訓練を行うこととなっておりまして、その計画及び訓練は、地域特性等を考慮して、地震、津波、風水害、その他の自然災害に係る対策を想定したものとし、特に、入所施設につきましては、夜間を想定した訓練も実施することとされております。

道議太田憲之

 それでは次に、高齢者や障がいのある方々が利用する施設に関しましては、移動困難者が多く、真っ先に避難準備が必要な災害弱者が利用する施設でございますが、これらの施設の避難計画の策定状況はどのようになっているのか、また、自然災害を対象にした計画となっているのか、お聞かせ願います。

大平施設運営指導課長

 避難計画の策定状況についてでございますが、道が所管いたします介護保険施設等では、本年4月1日現在で、1842カ所のうち、1834カ所、99.6%の施設が非常災害に関する避難計画を策定しており、このうち、地震、風水害等の自然災害を想定した計画を策定しているのは1690カ所、91.7%となっております。
 また、障がい福祉サービス事業者等では、同じく本年4月1日現在で、3022カ所のうち、2988カ所、98.9%の施設が避難計画を策定しており、自然災害を想定した計画を策定しているのは2731カ所、90.4%となっております。

道議太田憲之

 それでは次に、今回の災害に際しまして、市町村は、河川の氾濫に備えて、災害弱者の避難を促す避難準備情報を出したものの、趣旨が浸透しておらず、施設では、移動困難者も多いことから避難をためらったと伺っているところでございますが、道では、今回の被害の発生に伴い、どのような対応をされたのか、お伺いいたします。

大平施設運営指導課長

 災害に伴う道の対応についてでございますが、道では、このたびの台風災害を受け、直ちに、道所管の福祉施設及び市町村に対し、入所者の避難や職員間の連絡体制に係る具体的な計画の策定、定期的な避難訓練の実施、消防や地域住民との連携などにつきまして、改めて体制の確認を行うよう、文書による注意喚起を行い、特に、避難準備情報が発令された場合、要配慮者は直ちに避難する旨の徹底を図ったところでございます。

道議太田憲之

 それでは、今回の災害では、河川の堤防の決壊により、大きな浸水被害を受けたわけでありますが、このような立地条件にある社会福祉施設の状況について、道として把握はされているのか、お伺いいたします。

大平施設運営指導課長

 福祉施設の立地状況についてでございますが、水防法により、河川の増水で浸水する可能性がある浸水想定区域につきましては、国や道において指定を行い、要配慮者がいる福祉施設がこのような区域内にある場合は、市町村が、地域防災計画において、その名称及び所在地について定めることとされております。
 道では、新規の施設整備計画の協議や事業者指定申請があった際には、市町村等の災害部局と連携しながら、災害危険地区の該当状況の確認や避難体制の整備の重要性について理解を求めておりますが、全ての福祉施設の状況については、現時点では把握しておりません。

道議太田憲之

 ただいまの御答弁で、道として、各施設が浸水想定区域などに該当しているかどうかについては、全ては把握していないとのことでありましたが、利用者の安全を確保するために、河川の氾濫や土砂災害など、施設の立地場所にどのような危険があるかをきちんと把握するとともに、そのために必要な避難計画を策定しているかを確認し、未策定の場合には、早急に策定するよう指導助言をすべきと考えますが、部長の見解をお聞かせ願います。

保健福祉部長村木一行

 福祉施設における利用者の安全確保についてでありますが、高齢者や障がいのある方々が利用する施設の安全を確保するためには、立地場所の地理的状況等を考慮した具体的な避難計画の策定が不可欠でございまして、道といたしましては、施設の管理者に対し、避難計画の策定と訓練の実施について指導を行ってきております。
 道では、このたびの台風災害を受け、新たに、市町村の地域防災計画において、その施設が浸水想定区域に所在するかの確認のほか、立地条件に対応した避難計画の策定状況や避難訓練の実施状況などについて調査を行い、その調査の結果を踏まえ、必要な指導や助言を実施することとしておりまして、引き続き、施設を利用する方々の安全と安心の確保に取り組んでまいります。

道議太田憲之

 ただいま、るる御答弁いただきましたが、近年、北海道では、火山の噴火、また地震等への備えとしまして、各自治体で防災ハザードマップを作成するなど、いろいろな防災の備えについては充実してきているところでありますが、このたび起こった水害に関しては、先ほども言いましたように、想定外であったということでございます。
 各自治体で防災ハザードマップ等をつくっているところではございますが、どういった場所に社会福祉施設があるか、そういったところまでリンクさせて避難計画等を考えることが、これからの安全の確保にしっかりとつながってまいると思いますので、道として、一日も早い指導と状況の把握に努めていただきたいと強くお願いし、この項目については終了させていただきます。
 それでは、続きまして、食品関係事業者へのHACCPの導入についてお伺いをいたします。
 今月20日に開催されました、厚生労働省の有識者検討会におきまして、食品衛生管理の国際標準であるHACCPの導入を食品関係事業者に義務づける中間報告案がまとまり、2018年の通常国会に食品衛生法改正などの関連法案を提出し、数年後の実施を目指すとの報道がございました。
 HACCPは、従来の一律の衛生管理手法よりも有効性が高く、諸外国でも導入が進んでいることを踏まえ、今後、我が国においても、HACCPによる衛生管理の定着を図る必要があるとのことから、食品の製造、加工、調理、販売などを行う事業者に対して、HACCPに基づいた衛生管理計画の作成を原則として義務づけるということでございます。
 小規模事業者や、取り扱う食品が多岐にわたる業種については、工程の記録方法を簡易にするなど、一部、要件が緩和されるようではありますが、最終的な安全水準はHACCPと同等とするということでありますので、導入については相応の負担が伴うものと考えます。
 そこで、HACCPに関して、以下、何点かお伺いいたします。
 まず最初に、HACCPの義務化に向けた国の動きについてはどのようになっているのか、お聞かせ願います。

食品衛生課長八木健太君

 HACCPの義務化に向けた国の動向についてでありますが、厚生労働省では、本年3月に、食品衛生管理の国際標準化に関する検討会を設置し、国内の食品関係事業者におけるHACCPによる衛生管理の制度化について検討を行っており、先般、9月20日に開催された第8回検討会において、中間取りまとめ骨子案が公表されたところであります。
 この骨子案においては、食品の製造、加工、調理、販売等を行う食品関係事業者に対し、広くHACCPの導入を義務化する方針を示しますとともに、従業員が一定数以下の事業者等については、弾力的な運用を図る考え方もあわせて示しているところです。
 今後、国では、骨子案について意見募集を行い、年内には、対象事業者や導入時期を含めた最終取りまとめを公表する予定とされております。

道議太田憲之

 それでは次に、道内における導入の状況についてお伺いいたします。  日本におけるHACCPは、食品衛生法の一部改正により、1997年度から、総合衛生管理製造過程の承認制度として開始されておりますが、厚生労働省が公表した、HACCPの普及・導入支援のための実態調査結果によりますと、「施設全体として導入している。」と「一部の製造ライン又は一部の種類の製品のみに導入している。」を合わせた割合は、全国で11%とのことです。
 道内における導入状況は、現在、どのようになっているのか、お伺いいたします。

八木食品衛生課長

 道内のHACCPの導入状況についてでありますが、厚生労働省において、平成26年12月末時点のHACCPの導入状況について、全国の75自治体の食品製造施設等を対象として実施しましたアンケート調査の結果によりますと、HACCPを導入している、または、一部導入していると回答した施設の割合は、全体では11.0%、道内では10.2%となっているところであります。
 また、道内の事業規模別の傾向としましては、販売額が50億円を超える大規模事業者における導入割合は50%程度と高く、販売額が少ない小規模事業者になるほど、導入割合が低くなっているところであります。 

道議太田憲之

 ただいまの御答弁で、平成26年12月末時点では、道内におきますHACCPの導入状況は10.2%ということでございますが、全国よりも0.8ポイント低い状況にございます。  これまで、道としては、どのようにHACCPの導入推進に取り組んできたのか、お聞かせ願います。

八木食品衛生課長

 これまでの道の取り組みについてでありますが、道では、道産食品の安全性の確保や、衛生面での付加価値を向上するという観点から、平成14年より、HACCPの導入状況を評価、認証する事業を実施するとともに、平成27年度には、食品衛生法施行条例に、従来の衛生管理基準に加えて、HACCPの段階的な導入を図る新たな基準を規定したところです。
 また、道内各地の保健所におきましては、食品関係施設の従業員を対象とした、HACCPの導入方法に関する講習会の開催により、人材育成を図りますとともに、道と包括連携協定を結ぶ企業の協力を得て、消費者に対し、事業者のHACCP導入の取り組みを紹介するなど、事業者への支援に努めてきているところでございます。

道議太田憲之

 道としては、これまで、HACCPの導入状況を評価、認証する事業や、HACCPの段階的な導入を促す新たな基準づくり、普及啓発などの取り組みを進めてきたとのことでございますが、これらの取り組みを通じて、どのような課題が明らかになってきたのか、お伺いいたします。

八木食品衛生課長

 HACCPの導入に係る課題についてでありますが、大規模事業者においてHACCPの導入が進められている一方で、中小規模の事業者における取り組みが進んでいないところであります。
 この要因としましては、導入のメリットについて十分な理解が得られていない、HACCPに関する知識を有する人材が不足している、施設設備の整備に多大なコストがかかるといった誤解があるということが挙げられると考えております。

道議太田憲之

 HACCPシステムにつきましては、アメリカやEUなど、多くの国で義務化しているのに対して、現在の日本におきましては、自主的な食品衛生管理と位置づけられた承認制度となっており、日本型HACCPシステムとも呼ばれておりますが、事業者の自主的な取り組みとされていることから、中小規模の事業者への導入がなかなか進まない状況でございます。  事業者の取り組みを進めるためには、導入のメリットについて十分な理解を図っていく必要があると考えます。これに対し、どのように取り組んでいくのか、考えをお聞かせ願います。

保険衛生担当局長阪正寛

 HACCP導入のメリットの理解促進についてでありますが、HACCPを導入した際のメリットといたしましては、従業員の個々の能力に頼らずに、事業所全体として、品質のばらつきやロスが少ない安全な製品を安定して生産できること、また、そのことによりまして、取引先からの信用度が上がるといったことが考えられるところであります。
 道といたしましては、これらのメリットについて、引き続き、事業者や消費者に対して、啓発資料などにより周知し、理解を深めていただきますとともに、実際に事業者が行ったHACCPの導入の取り組みを、道のホームページや広報紙で紹介するなどによりまして、事業者の取り組み意欲を高めてまいる考えであります。

道議太田憲之

 HACCPの導入に当たりましては、施設設備の整備に要するコストへの懸念や、ノウハウを持った人材が不足しているとも伺っているところでございます。  道として、このような課題にどのように対応し、導入を進めていく考えなのか、お聞かせ願います。 

阪保険衛生担当局長

 HACCPの導入に係る課題への対応についてでありますが、HACCPは、施設設備などのハード面の改善を必要とせずに、施設の現状に即した適切な管理を工夫することにより、十分に導入が可能な手法とされております。
 こうした正しい知識について普及啓発を行いますとともに、HACCPの導入を希望する事業者に対しましては、現地調査に赴きまして、施設に合った具体的な管理方法を助言するなどして、誤解の解消に努めてまいります。
 また、事業者がHACCPを導入するためには、専門的な知識を有する人材が必要となりますことから、引き続き、HACCPの導入に必要な専門知識を習得するための講習会を開催いたしますとともに、講習会の受講が困難な中小規模事業者に対しましては、わかりやすい学習資料を提供するなど、効果的な人材育成の方法を検討してまいる考えであります。

道議太田憲之

 それでは、最後になりますが、義務化に向けての取り組みについてお伺いいたします。
 今後、HACCPの導入が義務化された場合に備えまして、小規模事業者などにおいても円滑に導入が図られますよう、計画的に準備を進めていく必要があると考えます。  限られた人員や資金の中で導入への対応に取り組まなければならない小規模事業者などに対して、道としては、今後、どのような取り組みを進めていく考えなのか、お伺いいたします。

村木保健福祉部長

 HACCP導入の義務化へ向けた取り組みについてでございますが、道産食品の安全性の確保は、道民の皆様が健康で豊かな食生活を営む上で基本となるものであるとともに、海外市場からも注目度が向上している良質な道産食品の販路拡大にもつながるものと考えております。
 道では、これまで、食品の安全性の向上に有効な衛生管理手法であるHACCPの導入を積極的に推進してきたところでありまして、このたび、国から、食品関係事業者全般にわたるHACCPの義務化の方向性が示されましたことから、今後、道内におきましても、より一層のHACCPの導入促進が必要と考えております。
 こうしたことから、道といたしましては、引き続き、国の検討状況を注視しながら、HACCPの導入義務化に際し、道内の中小規模の事業者が円滑に対応していけますよう、より効果的な人材育成や普及啓発の方策について検討するなど、事業者への支援に努めてまいります。 

道議太田憲之

 これまでの御答弁の中にもありましたが、HACCPに関しては、いろいろなメリットもあるところですが、イメージとして、複雑でよくわからないという認識がまだまだ強いと感じるところでございます。
 アメリカ、ヨーロッパ等では、もう既に義務化されておりまして、アメリカに関しましては、義務化をしたときから、食中毒が20%減った、そういった効果も出ているところでございます。
 HACCPの運用に関しましては、HACCPによって管理を行っていることを第三者が保証することにより、食品の安全性が一定水準確保されていると外から判断できるものでございます。
 また、HACCPは、認証制度ではなく、毎日行って取得するシステムというか、そういったものでございますが、ISOのように、HACCPを取得しなければならないといった誤解があり、そのことだけで難儀したり、機械等を買わなければならないというイメージが先行してしまっております。
 これから、保健福祉部を中心として、事業者から直接お話をお伺いしたり、きめ細かい指導を行うという御答弁がありましたので、ぜひとも進めていただきたいと思うところでございます。
 特に、北海道には、食に関してはほかの地域に誇れるものがございまして、今まで、海外から見たら、日本の食品は安全だといったイメージがあったのですが、事、これを輸出していくとなると、国際ルールの中で運用していかなければならないところでございます。